αではじめよう

奥行きを切り取る

花畑での少女
02

レンズで写真は変わる

ボケの描写は、絞り値だけではなく、レンズを換えることでも変えることができます。

機会があれば、レンズをいろいろ交換してみてください。ボケの個性を楽しんでみましょう。

ズームレンズと単焦点レンズ

レンズには、焦点距離を変えられるズームレンズと、ひとつの焦点距離に固定されている単焦点レンズがあります。ズームレンズと単焦点レンズは、焦点距離が変えられるということの他にも違いがあります。

それは、ほとんどの場合、単焦点レンズは開放F値(一番多く光を取りこむ際の絞り値)が小さいということです。開放F値が小さいレンズは「明るいレンズ」と呼ばれ、こうしたレンズはボケを大きくすることができるのです。

レンズの焦点距離もボケを変える

ボケを変える要因は、絞りの他に、レンズの焦点距離、撮影距離(ピントを合わせたい被写体までの距離と、ボカしたい背景までの距離)という要因があります。

レンズの焦点距離を変えると、同じ絞り値でも背景や前景のボケの具合が変わります。また、パースペクティブ(遠近感)も変化し、背景や前景の写る範囲が変化します。

左の写真は、レンズの焦点距離を変えながら、メインの被写体の大きさが変わらないように撮影位置を前後に変えていったものです。目盛りを操作して、ボケの変化を試してみてください。

レンズの「味」

絞り値、焦点距離、撮影距離などが同じでも、実はレンズの特性が違えば、ボケの部分の写り方が微妙に違ってきます。このレンズによる微妙な写り方の違いは、レンズの「個性」と呼ばれています。どのレンズも、互いに異なる「個性」を持っているのです。

虫眼鏡を覗いたときにわかるように、レンズを通して集まる光は、どのようなレンズの場合でも少しずつズレて、全体が一点に集まることはありません。そのズレは「収差」と呼ばれます。収差は、様々なレンズを組み合わせることで補正されますが、完全になくなることはありません。このレンズの収差の補正の方法は設計上の考え方によって様々で、これがレンズの個性となります。レンズの個性は「レンズの味」とも呼ばれます。「個性」は、ピントの合った被写体のシャープさや微妙な色の違いなども含みますが、ボケ像にもこの「個性」がはっきりと現れます。

ボケ像には「きれいなボケ」と「きれいでないボケ」があります。「きれいなボケ」は柔らかく自然なもので、写真の主題を損ないません。「きれいではないボケ」は不自然で、ともすれば写真の主題よりも目が行きやすくなってしまいます。

美しくないボケの例(二線ボケ)

美しくないボケの例(二線ボケ)

※二線ボケについては下記「コラム」をご参照ください。

美しいボケの例

美しいボケの例

ピントの合った部分のシャープさだけでなく、ボケを含めたレンズの味にまでこだわっていることが、αレンズの大きな特徴です。
COLUMN
収差とボケ像

きれいではないボケには様々な種類がありますが、特に目立つものに「二線ボケ」と呼ばれるものがあります。1本の線がボケたときに2本に見えるもので、柔らかくボケたボケ像と異なり、ピントが外れた被写体のパターンが複雑に入り組んでしまいます。

ボケ像の個性は、レンズの収差補正の方法で変わってきます。一般的に、前ボケが柔らかくきれいにボケるレンズでは、後ボケは柔らかくないボケになります。また後ボケのきれいなレンズは、前ボケが柔らかくないボケになります。ボケ方は、ぼかす背景の距離によっても変わってきます。

図は、木を背景に、花を前景において人物を撮影した場合の、個性の違う二つのレンズのボケ方の違いを表わしています。レンズの収差により、ボケている部分では、光の線は均一になりません。光の線が周辺部に集まっていると二線ボケ傾向となり、反対に中心に集まっている場合に柔らかいボケになります。


 
 
 
背景(立木)の
ボケ像
 
前景(花)の
ボケ像
 
 
レンズ1
前景ボケがやわらかくなるような
収差レンズの場合
背景ボケが二線ボケ
木 人 花
周辺に光が集まる=やや二線ボケ
周辺に光が集まる=やや二線ボケ
中心ほど光が集まる柔らかいボケ
中心に光が集まる柔らかいボケ
 
レンズ2
背景ボケがやわらかくなるような
収差レンズの場合
前景ボケが二線ボケ
木 人 花
中心に光が集まる柔らかいボケ
中心ほど光が集まる柔らかいボケ
周辺に光が集まり中心は光が少ない典型的な二線ボケ
周辺に光が集まり中心は光が少ない典型的な二線ボケ
美しいボケを追求した究極のレンズ「STF」

上の「収差とボケ像」で示したように、通常ボケ像は収差設計によってコントロールされるために、前ボケの綺麗なレンズは後ボケに、後ボケが綺麗なレンズは前ボケに硬さが残ります。”αレンズ”の135mm F2.8 [T4.5]STF(SAL135F28)は、「ボケ味は収差設計で決まる」と言う考え方を覆した他と全く異なる設計思想で作られました。このレンズは、収差を極限まで抑えることで光の集まり方を均一化、前後や距離によってボケ像が変わらないように設計されています。また、レンズ内部に設置したアポダイゼーション光学系によって、あくまでも柔らかく、綺麗なボケ味が表現されます。

さらに、画面周辺部で点像が円ではなくレモン型にゆがむ「ビネッティング」も完全に排除して、画面の中心から周辺まで全域に美しいボケ像を再現します。

花1

一般の135mmレンズで撮影。背景の木漏れ日のボケに円のエッジが見える。画面周辺部では丸ではなくレモン型に押しつぶされている。

花2

STFで撮影。ボケが、円周に付近でなめらかに薄くなっている。後ボケだけでなく、前ボケもなめらか。周辺部のボケの形もきれいな円を描いている。

理想のボケと、ピントの合っている部分の際立ったシャープさ。これらを追求したために、STFでは取り入れることができる光の量が少なくなっています。アポダイゼーション光学エレメントにより、像全体の透過率が下がるためです。絞り開放時、有効口径と焦点距離から算出した絞り値はF2.8ですが、露出はF4.5相当となります。STFの露出は、[T4.5]のようにTナンバーで示されます。またSTFは、レンズ枠の大型化により、レンズ全体の重量が重くなっています。 多少の明るさと携帯性を犠牲にしてでも、他には変え難い理想のボケとシャープさが欲しいというユーザーに高い支持を集めているレンズが、STFなのです。

収差を極限まで抑えた設計
前ボケ・後ボケを均一に表現

アポダイゼーション光学エレメント
独特の柔らかく美しいボケを生む

+αコラム

明暗の幅を切り取る
普通に撮ったら…

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HDR合成で…

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これまで、空間、時間、奥行き・・・それぞれの広がりを、どのように写真として切り取っていくかを見てきました。最後に、デジタルカメラで初めて可能になった明暗差の範囲を変える技術を紹介しましょう。いわば「明暗差の切り取り」です。

明暗の差が強いシーンでは、カメラは、目で見て感じたような色を再現できません。たとえば、真昼の海辺で影になった人物の顔を明るく写そうとすると、空や海は真っ白く写ってしまいます。写真は、明暗の差の強い場所では、人間の記憶のようにはなかなか記録できないのです。

この問題を解決し、人間の記憶に近い色を出す方法が、ハイダイナミックレンジ合成です。露出を変えた数枚の画像を記録し、後にそれらを合成することで、まるで映画の一場面のように色鮮やかな写真を作ることが可能です。このハイダイナミックレンジ合成は画像加工ソフトで行うことができますが、α550は、撮影時にカメラ内部でフルオート処理できる「オートHDR」機能が搭載されています。

デジタルカメラの進化によって、明暗の範囲も気軽に自由に切り取れるようになりました。これからの写真の大きな愉しみの一つといえるのではないでしょうか。